業務効率化やAI活用の現場では、複数サービスを統合して扱える仕組みが強く求められています。今注目されているのが、ワークフロー自動化ツールのn8nと、AIと外部サービスを標準化して接続するMCPです。
n8nは、直感的なGUIでノーコード自動化を実現し、700以上の外部サービスと連携可能です。一方MCPは、「AIのUSB-C」と例えられる共通規格として機能し、複雑なAPI連携を一括で扱える点が特徴といえるでしょう。
本記事では両者の特徴を解説したうえで、具体的な連携ステップをわかりやすく整理していきます。
n8n・MCPとは

業務効率化やAI連携の分野では、複数のサービスをまとめて扱える仕組みが必要です。n8nはアプリケーションの自動連携を実現し、MCPはAIと外部データを統一的に結び付けるための標準を提供します。
両者は役割が異なりつつも、共通して「接続を容易にする」存在として注目を集めており、2つの特徴を以下で詳しく確認しましょう。
n8nの基本情報
n8nは、業務自動化の自由度を大幅に高めるオープンソース基盤です。直感的に扱えるノーコード設計に加え、独自環境でのセルフホストも可能なため、柔軟な導入が実現します。
たとえば、外部サービスとの連携数は700以上あり、複雑な分岐処理にも対応します。結果として、企業は自社ニーズに沿った柔軟な自動化の設計が可能です。
<n8nの主要な特徴>
特徴 | 内容 |
オープンソース | ソースを自由に取得・改変でき、独自の最適化が可能 |
ノーコード対応 | プログラミング不要でGUIベースの操作ができる |
自ホスト可能 | セキュリティ要件を満たす環境構築が容易 |
多数のノード対応 | Slack・Google Sheets・OpenAIなど700以上と連携 |
条件分岐やループ処理 | If文やWhile文をGUIで再現できる |
MCPの基本情報
MCPは、AIの世界に共通規格を提供する仕組みです。根拠としてAnthropicが「AIのUSB-C」と表現している点が挙げられます。
従来は複数サービスと連携する際、APIごとに個別実装が必要でした。MCPを導入すれば一度クライアントを組み込むだけで、MCP対応サービスすべてと統合できます。
結果として、開発者は効率的にAIアシスタントを強化できるのです。
<MCPの主要なポイント>
項目 | 内容 |
標準化の役割 | 各種サービスを統一的にAIへ接続可能 |
比喩的説明 | 「AIのUSB-C」と表現されるシンプルさ |
実装負荷の軽減 | APIごとの個別連携作業を不要にする |
拡張性 | 一度の導入で複数ツールと柔軟に接続 |
開発効率 | コード量削減により工数を大幅に縮小 |
n8nとMCPの連携で実現できること

n8nとMCPを組み合わせることで、ルールベースの安定した自動化とAIによる柔軟な判断を同時に活用できます。n8nが確実なワークフロー実行を担い、MCP対応クライアントが解析や学習を行うため、効率と精度の両方を高められます。
企業や研究機関の具体的な利用シーンを整理すると、以下のような取り組みが可能です。
<ユースケース別:連携で実現できること>
シーン | 実現内容 |
eコマースのサポート対応 | ・意図と感情を解析 ・一般的な問題を自動解決 ・複雑案件を優先し適切なチームへ振り分け ・顧客対話の蓄積を基に応答を改善 |
大学・研究機関の論文処理 | ・多数のジャーナルから重要発見を抽出 ・トピックや重要度で分類 ・研究者間のコラボレーションを特定 ・関係者別にカスタマイズされた要約を生成 |
AIが分析を担い、n8nが実行を保証する仕組みによって、現場での作業がスムーズになり、継続的な改善が可能になります。
【4ステップ】n8nとMCPを連携する手順

n8nとMCPを組み合わせることで、自動化と外部連携が可能になります。効率的に稼働させるためには、段階的な設定が必要です。導入から動作確認までを順序立てて行えば、安定した連携が実現します。
以下の4つの流れに沿って作業を進めてください。
- n8nをインストールしてブラウザで起動
- MCPサーバーをセットアップして動作確認
- トリガーノードを追加して設定
- cURLで通信テストし、ワークフロー実行を確認
1.n8nをインストールする
まず、n8nをシステムに導入する必要があります。自動化を実行するための土台が整っていなければ、MCPとの連携も始まりません。
導入には2種類の方法があり、npmを利用する方法と、Dockerを利用する方法が用意されています。npmの場合は、コマンドを入力して直接インストールし、Dockerの場合はコンテナを起動して実行します。
いずれの方法でも稼働後はブラウザからアクセスでき、新規ワークフローの作成が可能です。
方法 | 手順例 | アクセス確認 |
npm | npm install n8n -g → n8n start | コマンド実行後に正常起動するか |
Docker | docker run -it –rm –name n8n -p 5678:5678 n8nio/n8n | コンテナ稼働後にアクセス可能か |
2.MCPサーバーを設定する
n8nと連携させるには、MCPサーバーを準備する必要があります。ワークフローの呼び出し先が存在しなければ、処理が成立しないためです。
利用できるサーバーは、GitHubリポジトリで確認でき、基本的な実装を選択して導入する形が一般的です。インストール先はローカル環境かクラウドインスタンスのどちらでも構いません。
設定の流れは大きく分けて以下のとおりです。
作業内容 | 実行例 |
リポジトリを取得 | git clone <リポジトリURL> |
依存関係をインストール | npm install |
サーバーを起動 | npm start |
エンドポイントを確認 | http://localhost:port/mcp にアクセス |
起動後、エンドポイントにアクセスして応答が確認できればサーバーが正常に稼働しています。
3.サーバートリガーノードを設定する
n8nで外部サーバーとやり取りするためには、MCPサーバートリガーノードの設定が欠かせません。ノードを追加して初めて、MCPからのリクエストを受け取れる仕組みが整います。
設定の進め方は以下の通りです。
<設定手順>
- n8nを起動して新規ワークフローを作成する
- ノードパネルから「MCPサーバートリガー」を検索し追加する
- URLパスや認証方式を入力する
- トリガーをHTTPリクエストノードなどに接続し、保存後に有効化する
<主要な設定項目>
項目 | 内容 | 補足 |
MCP URLパス | /mcp/abc123 など一意のパスを自動生成 | 必要に応じてカスタマイズ可能 |
認証 | 「なし」またはAPIキーなどを設定 | 本番環境では認証利用が推奨 |
接続先 | HTTPリクエストノードなど実行ノード | ワークフローの動作を定義 |
設定を保存して有効化すると、http://localhost:5678/mcp/abc123 のようなエンドポイントが公開されます。以降は外部のMCPクライアントからリクエストを受け取り、ワークフローが稼働します。
4.設定をテストする
連携設定が完了したら、通信が正しく行われているかを検証しましょう。MCP URLに対してリクエストを送信し、ワークフローが動くかどうかを確認します。
確認作業は、cURLなどのツールを利用するのが一般的です。
<テスト手順>
- ターミナルを開く
- cURLコマンドを入力して送信する
- 応答を確認して処理が開始されるかをチェックする
<コマンド例>
curl -X POST http://localhost:5678/mcp/abc123 -d ‘{“tool”: “example”}’
リクエスト送信後にワークフローが起動すれば、n8nとMCPサーバーが問題なく連携している証拠になります。応答が得られない場合は、URLやノード設定を見直すことで不具合の解消が可能です。
まとめ
n8nとMCPを連携させることで、ルールベースの安定した処理とAIによる柔軟な判断を同時に活用できます。n8nがワークフロー実行の土台を担い、MCPが外部クライアントとの橋渡しを行うことで、効率と精度を両立できる点が最大の魅力です。
導入手順は、n8nのインストールから始まり、MCPサーバーのセットアップ、トリガーノードの構成、そしてテストによる動作確認の4ステップで完了します。業務や研究に取り入れれば、定型作業の削減と継続的な改善が実現できるでしょう。